式色の胸

ずるり、ぴちゃり。

粘つく音は、ただ、不快だ。
際限なくしたたる唾液は、服の上からでも肌を濡らしていく。
……手錠で繋がれた両腕がいたい。
ケモノの舌は私の胸の形を丹念になぞって――――

「―――え?」

ケモノ―――白純里緒は声を上げた。
もう一度、同じところを舐めてみる。

「―――な、」

―――胸が、ない?
そんなバカなこと・・・
そうか、きっと一時的に舌がおかしくなってるんだ。
ああ、そうに決まってる。

そう、自分の考えの確認を取るべく里緒は同じところ、
式の胸に舌を這わせつづける。

「――――っ」

式は声を殺しその気持ち悪さに絶えているが、
当の里緒はというと、

ずるり、ぴちゃり。ずるり、ぴちゃり。ずるり、ぴちゃり。

と、ある意味必死になって舌を這わせていた。

―――ない、ない、ない。
そんなバカな、いくらなんでもこれはおかしい。
少年口調といえど、年頃の女。
それが、
それが、ドラ焼き程の感触さえないなんて!

ある種恐怖に震えながらも里緒は考える。

―――あ、喰っちまったのか?
両儀式の胸、
俺は無意識のうちに喰っていたのか??
だから、無い・・・のか?
起源覚醒なんてされたから?

と、里緒は自分に自信を失う程、ガクガクブルブル動揺中。

―――いや、違う。
俺はまだ喰っちゃいない。
それは確かだ。
なら、
なら、これはナンダ?

里緒は舐めるのを止めて式の胸元を見る。
着物の胸元は自分の唾液でぐちゃぐちゃになっている。
そして、そこにはあるべき女性の膨らみが、






―――ナイ

「―――年頃の女の子には胸があるはずだよな、ましてや俺が惚れた両儀式、胸は必須だ。」

自らの欲望から逃れるように、里緒は式から離れていく。
いや、正確には胸から、だ。

「・・・なのに! あんたには俺を満足させる胸がないかった。結局さ、Aカップのブラだって必要じゃない。□リ萌えみたいな人間を相手にしてもダメなんだ。あんたは俺が惚れた相手だっていうのに、どうして―――Aカップほども胸もないんだ!」

荒い息遣いもそのままで、里緒は横たわる式を見つめる。
そこに胸は、ない。

「そんなんじゃ困るんだよ……! 俺は胸がないとだめなんだ。安心できない。いつも、不安なんだ! あんたが……あんただけが俺の理想だと思っていたのに、ひどい裏切りだ。このままじゃ、白純里緒は満足できないじゃないか!」

……なんて愚かな勘違い。
白純里緒と名乗るソレは、おぼつかない足取りで草むらの方へ進む。

「……待っていてくれ。すぐに―――あんたの胸を大きくしてやるから。」

そんな呟きだけが聞こえた。
式はその言葉の意味がわかっているから―――許せるわけがない。
乙女の怒り爆破炎上。

「……ま、て」

そう言って手錠を引き千切る。
既に怒りによる発汗でクスリは抜けている。
式は里緒を鋭く睨みつけていう。
ちなみに、両腕はナイ胸を隠していたりする。

「―――そんなの、余計なお世話だ、好き放題いいやがって。おまえに何の権利があるんだ。」

両儀式の姿は、胸は無いが凄絶なまでに怒りで溢れていた。
白純里緒は呼吸すら忘れ、その姿に見惚れている。

「―――は、はは、は」

里緒は、笑った。

「―――あんたは、最高だ。その胸を除けば。」

……余計な一言が、癇に障る。
怒りのリミットはもうMAX。

「―――カンペ―――」

私はいいかげん、この駄犬の声を聞くのも飽きて―――
足元に落ちていた手錠の残骸で十七つにバラバラにしてやった。
一秒もかかっていないだろう。

「……ふん、胸のことなんて、不用意に口にするからだ。」

胸元を押さえて式はいう、
依然として、胸は無いけど。

ふと見上げる倉庫の窓からは蒼く光る月。

「ああ───気がつかなかった。
こんやはこんなにも
つきが、きれい────だ─────」

 

――ナイ胸END――



式色の胸/了
02/06/11 2:20脱稿
<あとがき>
はじめての人もそうでない人も、はじめまして、ういんぐです。
えーと、初のギャグSSです。
全月に登録されてた式乳祭りとかに感化されて書いたんですが、
ギャグになってますか?
まあ、殺人考察(後)の一部を雛型にしたので、書きやすかったですが、
人の目にどう写るかは分からないとかなんとか、
最後が何か月姫とかぶってる様に見えるのは・・・
たぶん気のせいじゃないです。(笑
感想の方ヨロシクです。

・・・ホントはね?
ういんぐは投稿してみようと思って書いたんだけど、
書きあがってからみて、どうも自信がなくて(--;
投稿とかは自信がついてからそのうち、です。


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