七夜の姫に流るるは、
相容れるはずなき、
遠野のチカラ―――
12/七夜姫流
魔術について、私は専門じゃない。
七夜の力は超能力の類で、生来の能力であることが多く、
遠野の力は異端の類で、反転して発現することが多い。
それはつまり退魔として必要な機能を学ぶまでもなく備えていたということで、
だから、こと魔術や秘術に関して、私は最小限のことしか知らなかった。
かわりに幼い頃から訓練をしてきたことといえば戦略を含む体術に、さまざまな武器・暗器術。
そして、自身の血の制御法だ。
『相対する血の混在は自我の崩壊を招く恐れがある。』
なんてことを幼い頃から父には聞かされていたが、その言葉は私にはあまり意味を為さない。
何故なら私の中では七夜の血の方が強いらしく、反転するほど遠野の血が騒ぐことはなかったのだ。
そんな訓練の中、血の制御法は要するに自己暗示や催眠の上級なモノといったところで、あまり興味もなく。
私が進んで訓練したのは投擲術と分銅術で、どうやらそれは性に合っていたらしい。
本来なら何年もかけて習得するそれを、私はたった数ヶ月で身につけてみせ、
その才をみた父は、早くして私に経験を積ませようと現役を退き、その場を私に譲った。
それが5年前。
その頃に丁度、同年代の女の子らしさというものの存在を知った私は自分の境遇と比べ多少の憧れを抱かなかった訳ではなかったが、
まあ、こんな家に生まれたのだ、それもいいだろう。
と、すんなりと自分の居場所を認めていた。
ただ私は、交換条件として中学に通うことを提示していた。
これは志貴おじいちゃんの話す学校と言うものに興味を持っていたからで、
何かに興味を持つことなど、私には珍しいことだといえる。
結果、中学入学からこっち私は一人暮しをしているわけで、
そうして分かったことは自分に思ったより俗なところがあるということ。
私はその生活が思いのほか気に入って、惰性のまま今は高校にまで通っているのだ。
毎日通う学校に、何気ない会話。
たとえ、授業中に級友たちと机を並べようと、私はあくまで別物だ。
どんなに越えたくても越えられないモノがある。
そんなモノの一つに、私には『魔眼』があった。
元来、七夜の者には浄眼と呼ばれる眼を持つ者が多い。
それは相手の思念を読み取るものであったり、
モノを見通す千里の眼であったりと、
自身の補助という意味合いが強く。
志貴おじいちゃんに在ったような攻性能力ではない。
対して、遠野のチカラは逆に攻性能力である場合が多い。
あるいは、凍結。
あるいは、炎焼。
能力のカタチは眼に拠らず、人外のチカラを発揮する。
七夜の血が強い私の眼はどちらかと言えば浄眼寄りで、
他に干渉する眼でないはずなのだが、遠野の血の影響か、
それは、ある種特殊な魔眼となって発現した。
それを、
『退魔の魔眼』
父はそう命名した。
退けているモノが退けるべき対象というこの魔眼は、
だけど、七夜の仕事には実に都合がよかった。
その特異性とは魔が魔である要因の無効化にある。
例え満月の夜であろうとも、この眼に捉えた存在はその能力を激減し、
そこに闇の加護は受けられない。
つまり、この魔眼に収められた対象はただの人間に成り下がるのだ。
そうなれば話は早い、人間としての性能を極限まで高めた七夜に、
魔の特性を失った者たちが敵うはずもない。
腕を落とされれば、再生は利かず。
眼を潰されれば、視力は戻らない。
不死の特性を無効化された者に待つのはただ、ひとつ
絶望的な死だけなのだから―――
七夜姫流/了
02/09/04 22:47脱稿